その後、海外展開する日本企業が増加するに伴い、名だたる企業から受注が舞い込んできた。そして設立から 4 年でディスカバリベンダーとしてのビジネスが軌道に乗り、UBIC は2007 年 6 月に東証マザーズ(現:東証グロース)に上場を果たす。上場によって 知名度と信用力を高め、成長を加速させることを期待していた守本だったが、日本企業への売り込みはそれほど進まなかった。東証マザーズへの上場で、確かに日本企業への知名度は向上したが、アジアや米国企業等、大半の顧客や関係者への知名度は期待したほどは上がらず、UBIC の米国でのプレゼンスも高められずにいた。 そこで、守本が次に行ったのは米国子会社の設立であった。東証マザーズへの上場からわずか半年後の 2007 年 12 月、UBIC North America, Inc. を設立。これを機に、日本企業から大型の契約が取れ始めたが、それでも守本は現状に満足しなかった。そして、米国ナスダックへの上場を決意する。リーマンショックの影響を受け、厳しい業績から立ち直りつつある状況での無謀な挑戦と、多くの関係者が反対する中、守本を突き動かしたのは、「欧米企業とアジア企業がグローバルで対等に戦っていくことのできる世界を作ることが UBIC の使命である」という思いだった。こうして創業 10 年に満たない日本のベンチャー企業が米国ナスダックに上場を果たした。守本がナスダック上場にこだわったのは、米国の訴訟支援ビジネスで成長するうえで立ちはだかる壁を超えるためでもあった。米国で訴訟支援を行うディスカバリベンダーの選定は、顧客である企業の意志だけではなく、訴訟を担当する弁護士の意向が強く働く。そこで、米国ナスダック上場企業となることで、彼らからの信頼を勝ち取ることが必要であると強く感じていたのだ。(注:2020年2月に米国ナスダック上場廃止) さらに成長を加速させるために、守本は手綱を緩めなかった。2014 年 8 月、TechLaw Solutions, Inc. を買収、子会社化した。TechLaw Solutions は米国のディスカバリベンダーとして 30 年超の歴史を持つ、従業員の誇りも高い企業。中堅クラスではあるものの、場数を踏むことで得たプロジェクト管理のノウハウや質の高いサービスは米国で高い評価を受けており、米国司法省とも強いコネクションを持つ。「米国上場していなければ TechLaw Solutions を買収することはできなかった」と守本は言う。さらに、同社の社員が一人も辞めずにチームとして留まったこと。それ自体が UBIC の米国での信用力の向上を示している。そして、それが米国での飛躍的な事業拡大を狙う、UBIC の大きな原動力となる。