(1)『自然言語処理AIを使った仮説生成の薬剤性肝障害の新規影響因子探索への応用』
薬剤性肝障害(DILI)の発症は様々な因子に影響されるため予測が非常に困難です。DILIに影響を及ぼす因子の探索には着目すべき因子を見出す仮説生成が欠かせません。自然言語処理AIは膨大なテキスト情報の網羅的かつ客観的な解析や言葉同士の演算を可能とし、近年創薬標的探索における仮説生成に活用されています。今回のセミナーではDILIと遺伝子の関係に注目し、仮説生成の観点からAIのDILI影響因子探索への適用可能性を検討した本研究について紹介します。
疾患との関連性が未報告な標的分子を創薬研究者が発見することが現在、極めて難しくなっている。FRONTEO Drug Discovery AI Factoryでは、大手製薬企業や国際的研究機関で培った豊富な創薬経験とAIに対する深い理解を併せ持つバイオロジストが自社開発の自然言語処理AIを活用し、独自の解析手法を用いることで新規性の高い標的遺伝子とその仮説生成を短期間に複数提案することが可能となった。
AIとバイオロジストの融合で創薬研究の大幅な効率化・加速化・成功確率向上を支援することについて紹介する。
(3)質疑応答
豊柴 博義
株式会社FRONTEO
執行役員 CTO ニューロ言語科学研究所 所長 兼 行動科学研究所 所長 博士(理学)
早稲田大学大学院 理工学研究科数学専攻。理学博士(数学、2000年に博士号取得)課程中の1999年より九州大学医学部附属病院の医療情報部にて医療データの統計解析を担当する。2000年よりアメリカ国立環境健康科学研究所(NIEHS)において、データ解析による発がんプロセスの研究などに参加。2004年からは独立行政法人国立環境研究所にて、毒性データの統計解析・疫学研究のデザインとデータ解析の研究に従事。2006年に武田薬品工業に入社し、バイオインフォマティクス分野の研究員、グローバルデータサイエンス研究所・日本サイトバイオインフォマティクスヘッド、サイエンスフェローを歴任。また、臨床試験データにおける遺伝子発現データ解析やターゲット探索、さらに免疫と癌におけるバイオマーカー探索にも携わる。
2017年よりFRONTEOでライフサイエンスAIの開発に従事。ライフサイエンスの領域に特化したAIアルゴリズムを開発。テキストのベクトル化という特徴を生かし、現在までに論文探索、創薬支援、認知症診断支援、転倒予測などのさまざまなAI製品をこの人工知能をベースに開発している。
2019年よりライフサイエンスAI CTO。2021年には執行役員に就任。数学的アプローチによる、AIの社会実装を更に推進する。